「ぼくはベス死ぬと思わない。あんなにいい子だし、ぼくたちこんなにかわいだっているんだもの、神さまがつれていらっしゃるわけはない。」
「やさしい、かわいい子は、いつでも死んでしまうんだわ。」
「きみ、つかれてるんだ、心ぼそく思うの、きみらしくないよ。ちょっと待ってて。」
ローリイは、階段をかけあがり、まもなくいっぱいのぶどう酒を持って来た。ジョウはにっこり笑って、ベスの健康のために飲むわといって飲みました。
「あなたいい医者ね。そして、ほんとに気持のいいお友だちね、どうして、お返しできるかしら?」
「いずれ勘定書を出すよ。そして、今夜はぶどう酒より、もっときみの心をあたためるものをあげるよ。」
「なんなの?」
「昨日、電報うったのさ。そうしたらブルック先生から、すぐ帰るという返電さ。だから、おかあさんは、今晩お帰りになる。そうすれや、万事好都合だろう。ぼくのやったこと気にいらない?」
ジョウは、狂喜してさけびました。
「おおローリイ! おかあさん! うれしい!」
ジョウは、ローリイにしがみつき、めんくらわせてしまいました。けれど、ローリイは、おちついて、ジョウのせなかをさすり、気がおちつくのを見て、二三度はずかしそうにキッスをしました。それで、ジョウはきゅうにわれにかえり、やさしくかれをおしのけ、息をはずませながらいいました。
「だめよ、あたしそんなつもりじゃなかったのよ。いけなかったわ。でもハンナがあんなに反対したのに、電報うって下すったと思うと、うれしくて、とびつかずにいられなかったの。きっとぶどう酒のせいだわ。」
ローリイは、笑いながらネクタイをなおしました。