ラタトゥイユ

夏野菜料理の王様『ラタトゥイユ! 失敗しないコツ』

ラタトゥイユはフランス南部プロヴァンス地方を代表する野菜料理。よく似た料理にイタリア料理のカポナータがありますが、この二つには似て非なる別物です。カポナータの作り方は別の機会にご紹介しますが、今日のテーマはラタトゥイユ。

ラタトゥイユをつくると

  1. なんとなくぼやけた仕上がりのもの
  2. 油っこいもの

という残念な仕上がりになることがあります。いくつかのコツを踏まえれば美味しく作れます。いつもより丁寧な作り方かもしれません。まずは材料です。

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ラタトゥイユ(4人前)

トマト 3個(約500g)

にんにく 2片

玉ねぎ 小1個(約150g)

オリーブオイル 大さじ2

バジルの茎、ローリエ、赤唐辛子 適量

トマトペースト大さじ1

ズッキーニ 2本(今回は大きいものだったので1本 250g〜300gが重量目安)

なす    3本(約250g)

パプリカ(赤、黄)各1個

玉ねぎ 小1個(約100g、今回は極小を2玉使用 4mm厚のスライス)

まさに季節の夏野菜勢揃い、という印象。ちなみにカボチャなどを入れてもボリュームが出て美味しくなります。まずはパプリカの皮剥きから。

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他に皮をむく方法は色々有りますが、コンロの直火にかけて、皮を焦がします。

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くぼみや茎の部分などが焦げないことがあるので、お店ではバーナーを使ったりします。あると便利ですが、なくても平気です。

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焼きあがったら決して水にとってはいけません。ボウルにいれてラップをかけて蒸らしておきます。こうして冷ますことであとから皮が剥けやすくなります。

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冷ましているあいだにトマトの皮も剥いてしまいましょう。湯むきでもいいのですが、同じように焼いてもOK。

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簡単に皮を剥くことができます。

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半分に切って種を取りのぞきます。種のまわりの部分にはうま味が多く含まれているのでぜひとも使いたいところですが、種自体は硬くて味がないのでこのようにザルに移して……。

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濾してしまいましょう。トマトは角切りにします。

トマトコンサントレをつくっていきます。にんにく、たまねぎはみじんぎりにしておきます。

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鍋にオリーブオイル大さじ2とニンニクのみじん切りを入れて中火にかけます。

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しばらく炒めたら、みじん切りにした玉ねぎを加えてさらに炒めていきます。

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弱火で透明感が出て、少ししんなりするまで炒めましょう。玉ねぎのみじん切りが上手にできていれば多少いい加減でもなんとかなりますが、粗いみじん切りの場合はより丁寧に炒めます。

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トマトの角切りと、さきほどの濾した種のまわりのジュースを入れます。火加減は弱火から中火(強火でもOK)に戻しましょう。

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バジルの茎、ローリエを加えます。タイムがあれば入れるといい香りが出ます。種をとった赤唐辛子を一本加えました。辛味を利かせて味を引き締めるためですが、辛いのが苦手なら入れなくてもOK。今回はトマトペーストを大さじ1加えました。熟した美味しいトマトなら入れなくても大丈夫。水分が沸騰してきたら弱火に落とします。

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蓋をしめて15分。煮込みます。

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十五分経ったら蓋をあけて水分を飛ばしていきます。写真は10分経過したものです。火加減やトマトの違いによって時間には差が出てきますが、写真のように木べらやシリコンベラでかき混ぜて、鍋底がみえるくらいの濃度がついてきたらOK。この煮詰め具合が非常に重要になります。

よく煮詰めたほうが濃厚になる気がしますが、オリーブオイルが乳化するには一定の水分が必要。煮詰めすぎると分離してしまいます。適当なところで止めて、一度ボウルにうつします。

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出来上がり分量が350gでした。そこで1%の塩分を加えて味をつけます。つまり、今回は3.5gですね。

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これが最初のコツ。すべてのパーツごとに、適度な塩味をつけていくのです。慣れてくれば計らなくても適当に塩を振ればいいのですか、ちゃんと計量したほうが失敗はありません。こうすることで仕上がりの味がぼやけるのを防ぐことができます。まずはきちんと味がついたソースができました。

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パプリカの皮を剥いて、棒状に切ります。

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こちらもきちんと重さを計り、重量を計算します。およそ180gですから、1.8gの塩を用意して、

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混ぜあわせておきます。このように一つ一つに塩味をつけていくのです。レシピにはよく「最後に塩コショウで味をととのえる」という表現がありますが、フランス料理では都度、味をつけていき、少しずつパーツごとに整えていきます。この塩の量の調節が味を決めます。

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ズッキーニも切っておきましょう。重さを計っておきます。ぴったり300gですね。

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さて、なすは1cmの厚さの輪切りにしました。ラタトゥイユにはしっかり煮込んで一体感を出した仕上がりと、あまり煮込まずフレッシュ感を出したものがあります。今回はあまり煮込まずフレッシュな感じを残したいので、野菜あえて不揃いに切り、リズム感を出します。逆にしっかり煮込んで一体感を出したければ形を揃えましょう。

2つ目のコツです。なすに1%の重量の塩を振って、15分置くのです。ナスのアク抜きに塩を振るのは昔ながらの方法。ナスのアクの成分は塩を振るだけでは消えませんので、おそらく苦味を塩味でマスキングするためだったと考えられます。ちなみに偉大なるシェフ、ジョエル・ロブションは「ナスから水気が出てしまうので、塩を振ってアク抜きはしないほうがいい」と薦めています。現在のナスは品種改良が進み、エグみや苦味が少なくなったことがその理由。

ロブション氏の意見には賛成ですが、今回は教えに逆らって塩を振っています。何故でしょうか? それは塩を振ることで、ナスが油っぽくなるのを防ぐことができるからです。メカニズムはこうです。ナスは空洞の多いスポンジ状をしています。そのため、そのまま調理すると油が吸い込みやすのです。予め塩を振って水分を出すことで、その空洞を水分で埋めてしまうことができます。そうすることで油が入ってくるのを防ぐことができるのです。このことは簡単な実験で確かめることができます。四等分などの大きめに切ったナスを用意し、予め塩を振ったものとそうでないものの二つを用意します。予め重量を計り、オイルで焼きます。焼きあがってからもう一度、重量を計ります。増加分が油の量です。すると予め塩を振ったもののほうが油を吸い込んでいないことがわかります。この工程をとることでラタトゥイユが油っぽくなるのを防ぐことができます。

さて、15分経ったものです。

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水分が浮いているので、ペーパーで拭き取ります。

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鍋にオリーブオイル小さじ1を熱して具材になる玉ねぎを軽く炒めます。玉ねぎの重量が100gですから1gの塩で味をつけます。表面が透明になればOK。

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さきほどのパプリカを加えて、さらに炒めます。

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ソースを加えましょう。

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混ぜあわせて、弱火にかけて置きます。

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さて、大さじ1のオイルでさきほどのナスを焼いていきましょう。中火でじっくりと加熱していくのがコツ。表面はこんがりと、なかは焼きナスのようにジューシーになるのは予め塩をしてあるので早く火が入るから。ナスの果肉よりも水分のほうが熱が伝わりやすいのです。

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熱々の鍋に加えます。

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大さじ1のオリーブオイルでズッキーニも両面、こんがりと焼きましょう。ズッキーニはナスとは果肉の構造が異なりますので、あらかじめ塩を振ってはいけません。両面にこんがり焼き色がついたら、1%重量の塩で味付けをします。今回は3gです。

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ズッキーニはなすとちがって油を吸わないので、表面の油をペーパーなどで軽くとります。それから鍋にうつします。

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弱火にかけたまま優しく混ぜあわせていきます。ラタトゥイユは煮込み料理ですが、今回はあまり煮込みません。それぞれの素材の味を活かした仕上がりにします。全体が熱々になればOK。煮詰まるとソースの塩分が濃くなってしまいます。

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出来上がりです。ポーチドエッグなどを添えれば前菜になります。野菜をあえて不揃いにすることで、持ち味を活かしました。それぞれに炒めることと、ひとつひとつにきちんと味をつけることが美味しさの決め手です。

トマト・コンサントレをつくるのが面倒なら以前にご紹介した『基本のトマトソース』でも美味しくつくることができます。野菜の量のバランスも重要なので、とにかく計ることで味が安定します。よくレシピには小さじ……という形で書かれている塩の量ですが、野菜の重さが変われば塩分量も変わってきます。一概に小さじ、大さじでは伝えられないのが難しいところ。

野菜の重さや塩を計るのは面倒そうに見えるかもしれませんが、まないたと鍋の横に計りを置いておけば簡単です。ラタトゥイユは大量につくることが多いので、目分量では塩味が狂いがち。一度くらいは正確に計量して料理をしてみるとはいかがでしょうか。

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おまけですが、ラタトゥイユは冷たくしても美味しく食べることができます。その場合は仕上げにワインビネガーを小さじ1ほど加えると美味しくなります。冷たくすると塩味などを感じにくくなるからです。白ワインビネガーでも赤ワインビネガーでもお好みのものを。個人的には赤ワインビネガーが好みですが、米酢や穀物酢だとマイルドな感じになります。それでは。